Carry Your Life on a Season [Belta]
4月、色とりどりのスーツケースを転がしている国内外からの旅行者や、真新しい大きなカバンを背負い新しい友と歩いている専門学生、ターミナル駅は大荷物を持った人々が行き交いにぎわっています。いつもの通勤経路に新しい出会いのエネルギーに満ちた空気が流れ込んでくるのを感じて、それがだんだんと馴染んでくる中旬。

今年も昼休みに池尻大橋寄りの目黒川の桜を見ることができました
長年バッグの仕事に携わりながらも「自分にとってのベストなバッグとは」とずっと問い続けており、年齢とともに自身のニーズも変わっていくので、なかなか「これだ」とは定まらないものだなあと日々感じていました。私は持ち歩く荷物の量がおそらく平均より少し多め、そしてできるだけ荷物をひとまとめにして持ち歩きたい派です。 特にちょっとした旅行やイベントなど、持ち物が日常 plus α になる時に結局バッグが2つになってしまうことがあり、「こんなにバッグを持っているのになあ」といつも苦笑いしています。デザインと使い手にフィットするバランスとは難しいものです。そんな自分の希望と理想を叶えてくれるバッグを企画できたらいいなとずっと思っていました。

オリジナル生地の生産管理をしながら、以前染めた厚織のリネン生地の在庫のことがずっと気になっていました。世界最古のリネン紡績メーカーである仏サフィラン社の糸を贅沢に使用し、岡山県倉敷で織られた厚織のリネン。リネン好きな方はご存知かと思いますが、ここ数年、リネン製品の価格は高止まりの状況が続いています。コロナ禍以降、世界情勢やSDGsの現地需要の高まりなどによって日本へ入ってくるリネン糸価格が高騰、今当時と同じ品質のものを同じ価格で作ることはできません。
生地をオリジナルカラーで染める場合、最低ロットというものがあります。生地種にもよりますが、だいたい最低でも300〜500mを加工しなければオリジナルの生地を作ることはできません。バッグの用尺は大体が1mくらいなので、シーズンで使い切ることが難しいこともあります。闇雲に消化するのではなく、品質の良い生地は大切に製品にしていきたい。倉庫にはそんな過去製作した生地が色々と残っていたりします。
ちょうど夏に出す新作のミーティングをしていた時に、持ちたい大きさとデザインのイメージがなんとなく頭に浮かんできて、あの夏らしい色合いの厚織リネンが合うんじゃないかなとサンプルを作ってみることにしました。

そんなきっかけで生まれた「Belta(ベルタ)」のデザインは、『リネンだけど素朴になりすぎず都会で持てる雰囲気』『たくさん荷物がある時も重みに負けない』がテーマでした。リネン特有の落ち感を活かしつつ、大容量の重みを支えてくれる安心感を叶えているのは、ボディ側面とショルダーの太めのベルトです。裏地はシワ加工のナイロンにすることでリネンの落ち感と相まってフォルムに自然な空気の含み感が生まれました。
季節の変わり目に、薄手の上着を忍ばせておくゆとりもある大容量。内側には手を入れた時に小物の住所がわかりさっと取り出せるように4箇所の内ポケットがあり、財布や文庫本、バッグの中で倒れてしまうペットボトルも差し込んでおくことができます。裏地は中が見えやすいよう、あえて明るめの配色となっています。
これは普段の物量で、ここからさらに荷物が増えても安心
ショルダーの長さは最後まで悩み、「ゆったりたすき掛けできたらいいのに」と感じる方もいるだろうと思いつつも、どうしても肩掛けメインで持ちたかったので、たすき掛けが「ぎりぎり」できなくもない長さで調整しています。口元のファスナーはあえて無骨な金属製にしました。
2週間後にはゴールデンウィークが控え、みなさまも行楽の予定を立てはじめている頃でしょうか。ついこの間まで桜が咲いていたというのに、あっというまに目黒川沿いの木々も美しい新緑に覆われています。温度や湿度が少し変化するだけで視界に入ってくる色の印象も変わり、毎年同じことを感じているはずなのにまた新鮮な気持ちになれるのですから不思議なものですね。

パープルが透けるナスコン色、そしてグレー味あるサックスブルーで染められた厚織リネンの質感は、初夏の空気によく似合います。移動やイベント事が増えるこれからの季節に Belta は凛とそして頼もしい相棒として活躍してくれそうです。
写真・テキスト / Nao Watanabe
©️2026 ateliers PENELOPE







